2026.3.5
レポート:映画『90メートル』中川駿監督×山時聡真さん トークイベント
2026年2月28日、第3回北九州国際映画祭にて、オープニング作品である映画『90メートル』の上映が行われ、主演の山時聡真さんと中川駿監督を迎えたトークイベントが開催されました。
「温かく迎え入れていただいて感慨深い」— 凱旋と映画祭への思い
小学6年間を北九州で過ごしたという山時さんが「温かく迎え入れていただいて感慨深い」と笑顔で挨拶すると、会場からは大きな拍手が沸き起こりました。
10歳の頃に小倉昭和館で舞台挨拶をした際、階段を駆け上がって退場しようとして大転倒してしまったという可愛らしい思い出も明かされ、和やかな雰囲気の中でトークがスタートしました。

中川監督は、自身が短編映画をきっかけに商業デビューを果たした経緯に触れ、「今回の短編コンペティション部門など、北九州国際映画祭の取り組みは素敵で、オープニングを飾れることがとても嬉しい」と喜びを語りました。
「“一流とはかくあるべし”と見せつけられた」— 菅野美穂との共演と現場作り
3月27日より全国公開される本作は、難病を抱えるシングルマザーと、その介護をしながら人生の岐路に立つ高校生の姿を描いた物語です。主人公・藤村佑を演じた山時さんは、劇中の家事シーンを通じて「家事ってこんなに大変なんだ」と実感し、ご自身の母親への感謝の気持ちが切実に大きくなったと撮影を振り返りました。

トークの中盤では、ダブル主演を務めた菅野美穂さんとの撮影秘話も飛び出しました。
山時さんが「一流とはかくあるべしと見せつけられた」と語るほど、菅野さんのパフォーマンスは現場全体のクオリティを引き上げていたといいます。
また、撮影中に菅野さんから「介護をする気持ちで私の爪を切って」と頼まれ、山時さんが「皮膚を切ったらやばいぞ」と震えながらも距離を縮めていったというエピソードには、観客も興味深く聞き入っていました。
中川監督も、山時さんの素直で真摯な姿勢を絶賛し、「彼がのびのびとパフォーマンスできる環境を作ろうと、現場全体が彼中心に動いていった」と深い信頼を寄せました。

「普遍的な愛を描いた作品」— 自身と大切な人に置き換えて
北九州滞在中には二人で散歩に行ったり、前日には一緒にモツ鍋を食べに行ったりするほど仲が良いというお二人。山時さんにとって監督は「お兄ちゃんみたいな存在」だそうです。
終盤、映画の見どころについて問われた中川監督は「ヤングケアラーや病気という要素に軸足を置くのではなく、『親の小離れ』『子の親離れ』といった普遍的な愛を描いた作品。ご自身と大切な人に置き換えて見てほしい」と語りました。
最後に山時さんが「他人事ではなく自分事のように見ることができる、背中を押してくれる優しさがある作品。必ずまた北九州に帰ってきます」と力強く再訪を約束し、映画祭のオープニングにふさわしい、温かな熱気に包まれたままイベントは締めくくられました。