メニュー

閉じる

2026.3.12

レポート:映画『大いなる不在』近浦啓監督×藤竜也さん・山崎裕さん トークセッション

2026年3月1日、J:COM北九州芸術劇場。第3回北九州国際映画祭のフィナーレを飾るクロージング作品として、映画『大いなる不在』が上映されました。
客席を埋め尽くした観客の期待が高まる中、上映前後にトークセッションが行われ、作品の背景から映画祭の未来までが熱く語られました。

「脚本を手に持たない」名優の凄みと、北九州の街が持つエネルギー

上映前のステージには、本映画祭の総合プロデューサーも務める近浦啓監督と、本映画祭で特別功労賞を受賞した主演の藤竜也さんが登壇しました。
藤さんは受賞の喜びを語りながらも、近浦監督とのタッグについて「非常に縁が深い」と感慨深げに挨拶されました。近浦監督もまた、世界各国の映画祭で高く評価された本作を、自身の故郷でありロケ地でもある北九州で上映できる喜びを語り、トークは制作の舞台裏へと移りました。

近浦監督が特に強調したのは、藤竜也さんの圧倒的な役作りです。「藤さんは現場で脚本を手に持っている姿を一度も見たことがありません。全てが頭に入った状態で現場に来られる。その姿に、僕もスタッフも毎回凄みを感じていました」と、名優の徹底した姿勢を称賛しました。

「映画には磁力というものがある。それをこの作品で教えられた」。近浦監督と3度目の取り組みとなる藤竜也さんは、監督への信頼をそう口にしました。観客を惹きつける磁力のような魅力があり、その求心力があって初めて映画は存在しうるのだという、映画俳優としての情熱が溢れるコメントでした。

 

受け継がれる「映画の街」の視点。自らの足で選び抜いた「故郷・北九州」の風景

さらに話題は、全編の約7割を撮影したという北九州のロケ地へと及びました。近浦監督は「自分が見て育った北九州を、偉大な先人である青山真治監督とはまた違うアプローチで映し出したかった」と語り、皿倉山や若松の海、黒崎の住宅地など、自らロケハンを重ねて選び抜いた風景へのこだわりを明かしました。「スクリーンに映る北九州の街並みこそが、この映画の大きな見どころです」という監督の言葉には、郷土への深い愛情が滲んでいました。

トークの締めくくりに、藤竜也さんは3月31日にNHK総合で放送予定の『魯山人のかまど』への意気込みを語り、会場を沸かせました。そして近浦監督は「映画の街・北九州から、さらに多くの映画人が輩出されることを期待しています」と締めくくり、観客の期待感は最高潮に達し、いよいよ本編の上映が始まりました。


「まさにこの場所で撮っていた!」35mmフィルムに刻まれた撮影現場の舞台裏

上映後の興奮冷めやらぬ会場には、近浦啓監督と本映画祭の「サンフラワー・ショートフィルム・インターナショナル・コンペティション」の審査員長であり、本作『大いなる不在』では撮影監督を務めた山崎裕さんが登壇しました。

近浦監督が「劇中で森山未來さんがリハーサルをしていたのは、まさにこの劇場の小劇場なんです」と明かすと、客席からは驚きの声が上がりました。まさに撮影が行われたその場所で、観客と共に作品を鑑賞できた不思議な縁が語られたほか、デジタル全盛の今、あえて35mmフィルムでの撮影に挑んだ本作のこだわりも語られました。近浦監督は「現像するまで結果が分からない、まるで「写ルンです」のような緊張感と喜びの1ヶ月だった」と、フィルム特有の命の宿り方を振り返り、山崎裕さんも「監督からの刺激的な挑発を受けながらカメラを回した記憶が蘇った」と当時を回想しました。

客席の光石研さんも絶賛。受け継がれる「映画の街」の魂

さらに、客席で本編を鑑賞していたプロモーション・アンバサダーの光石研さんが、マイクを向けられると「緊張しますね、大先輩が……素晴らしかったです!」と熱い感想を述べ、北九州ゆかりの映画人同士の温かな交流に会場は沸きました。憧れの先輩からの言葉に、近浦監督も「わざわざ観ていただけるなんて感無量です」と喜びを滲ませました。

最後に、山崎裕さんは「映画祭はお祭り。映画館でお金を払って観るのとは違う形で映画を楽しめる。この祭りを大切に育ててほしい」と願いを込め、近浦監督は「世界の中でしっかり花咲くような、そういう映画祭にしたい」と力強く結びました。会場は割れんばかりの拍手に包まれ、第3回北九州国際映画祭は華やかに幕を閉じました。

トップへ戻る